本日は、平成29年(2017年)12月28日木曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 元キーエンス社員、
中小企業診断士の立石です】
今回もズバリ、創業まもない中小企業の経営者の皆さま、
そして大手企業の新規事業部門の責任者の皆さまへ、
製造業専門の経営コンサルタント(中小企業診断士)として語ります。
『きちんと考えて、何かにトライする(本当の意味での仕事をする)人』を
採用したものが勝つという、シンプルな話題です。
当時のキーエンス新卒入社組は、
現在入社される【超】【超】高い偏差値の大学出身者は、
さほど見当たりませんでした。
ところが、創業者の期待通り、ほとんどがトライする社員であったと思います。
ほぼ無名のキーエンス(1986年就活時期の社名はリード電機)にとって、
人材獲得は不利であるはずですが、当時40数名の採用予定に対して、
多数の応募者(1600名以上)がありました。
応募者の母数が増えれば、希望する人材を獲得できる確率も高まります。
応募者殺到の要因として、
当時の就活時期は、円高不況で大幅採用減。特に大手電機業界への就職が絶望的。
そのため、電機志望の就活生が中小企業のキーエンスにも目を向けたのです(追い風)
そして何よりも、創業者が前面に出る会社説明会。
キーエンスには、天運と創業者の策があります。
考えてトライする社員 ⇔ ルーチン社員
前回綴りました通り、
私がキーエンスに新卒入社した30年前(1987年)直後あたりから、
創業者から『きちんと考えて、何かにトライする(本当の意味での仕事をする)こと』が、求められました。
全従業員が暗唱必須である【行動指針】が、その実践手順の基本でありましょう。
(キーエンスの行動指針に関連する記事は、>>>コチラをクリックしてください)
『きちんと考えて、何かにトライする社員(本当の意味での仕事をする)』と対極にあるのが、
『与えられた(決められた手順通りに)業務をこなす、ルーチン社員』です。
キーエンスでも(ルーチン)社員は必要でありますし、存在しているはずですが、
創業者が最終面接で採用する正社員に限っては、前者のみであることに
間違いなかったと思います。
『きちんと考えて、何かにトライする(本当の意味での仕事をする)』・・・
正確には、当時そうしなければならない環境に直面したのであります。
私が入社した当時は、3つの事業部門がありました。
「黎明期のニッチ商品ともいえるオリジナルセンサ」の部門、
その後の成長を目指し
先行する巨大企業とのシェア獲得競争に乗り出した「基本的なセンサ」の部門。
「基本的なセンサ」は、お客さまが熟知されている場合が多く、
他社とのサイズ・性能とも、当時はほぼ同等品でした、
いつでも他社に乗り換え・乗り換えられるといった、し烈な競争商品です。
キーエンスの直販営業担当者に求められるのは、
もちろん実績のある先発企業のシェアを奪うことです。
営業力も必要ですが、売上高伸長(キーエンスでは成果伸長→コチラをクリックしてください)には
「考えて行動すること」が必要です。
キツイ言い方をしますが、御用聞き営業(ルーチン社員)のスタンスでは、
通用するはずがありません。
そして、私が配属されたのは、「最も高額であった精密計測機器の部門」。
キャッチアップしたい先行企業がありました。
基本的センサのライバルほど、巨大な企業でありませんが、
当時、他社の物真似をしない、
オリジナルでハイレベルな技術・そしてブランドで、
キーエンスを圧倒していたアンリツです(売上高が10倍以上だったかと)
(当時、まさかアンリツに転職するつもりもなく、ライバルにもなりえない雲の上の存在、
キーエンス入社後に知った、恐ろしいほど高い技術の企業だと思っていたにすぎません)。
私の担当した精密計測機器は、社内で最も高精度の機器を扱っていましたが、
精度比較では、事実として当時のアンリツの足元にも及びませんでした。
商品展開のコンセプトも、顧客ニーズを満たす云々のような代物ではなく、
アンリツに比べて、(精度は劣るが)サイズが小さい・価格が安い・・・その程度です。
小さいことで、人気となった商品もありましたが、
測定機器が選定される、重要なファクターのひとつが「精度」に
間違いなかったと思います。
当時、キーエンスの営業担当者共通の販売スタンス(ルール)がありました。
客先訪問の際は「実機を持参してPR」。
ご要望があれは「機器をお貸出しする」です。
先行するアンリツの機器は、
当該製品でキーエンスより10数年先行(真の業界初)。
高い価格で高精度(高付加価値)。
お問い合わせされるお客さまで、「アンリツ」を知らない方は、
ほとんどいらっしゃいませんでした
(当時のキャッチ「光で未来をテクノロジーするアンリツ」、
このブランド力にも圧倒されました)。
当時、キーエンスは雑誌広告掲載にも注力していたため、
お問い合わせは、相当数来ます。
ところが、たくさんのお引き合いに対して密に対応しても、
ほとんど受注に至らないという現実がありました。
理由は
①アンリツと同等の精度がでない(残念なことですが、わかりきったことです)
そして
②アンリツより安いので、どういう構造(からくり)か知りたかっただけ(単なるご興味)
以上のような商談ケースが続くと、フツーの会社では、どうなるでしょうか?
営業部門から、不満が爆発すると思います
◆「(アンリツに比べて)精度が悪いから売れない」
◆「こんないい加減な機器を開発した技術担当者は、
一体何を考えているんだ!(激オコ)」
◆「以降、引合が来ても、この機器はPRしません」
以上の発言は、キーエンス流のロジカル思考に照らすと、全て【逃げ】です
(業務放棄:敵前逃亡みたいなものです)
もちろん、そんな後ろ向きの発言が、
一切許されないのが当時のキーエンスです。
売れない商品があっても、目標予算が下げられることは、
【絶対に・絶対に・100%と言っていいほど】ありえませんでした。
上記の◆各種不満は、
モラール(士気)の低い(いわゆるブーたれる)連中の発言とみなされます。
キーエンスの『きちんと考えて、何かにトライする(
本当の意味での仕事をする)社員』には、無縁のものです。
経営者の方は、既にお気づきになっていると思います。
逃げる社員でなく、まずトライする社員を採用したものが勝ちだと・・・
繰り返しますが、当時を回想すれば、
トライする直販営業担当者は、高い偏差値等との相関関係はありません。
全員素人が試行錯誤して、販売ノウハウを築く
当時、私が所属して精密計測部門の販売グループ。
実は、私の入社半年前に組織改編あり(責任者と担当者が大きく異動したとのこと)。
全員、もちろん文系出身(そして新卒入社は私だけ)。
凄腕の責任者(私の人生の恩師→是非、>>>コチラをクリックしてください)は、基本的センサの責任者から横滑り、
精密計測機器をどう売るか?
誰もそんなノウハウなど持っているはずがありません、
それでも、『全員で考えて売る』ことに、まい進します
(>>>関連記事は、コチラをクリック)。
振り返ると、責任者の上位の地位にあたる本社の経営幹部も、
創業者から相当「考えて行動しなさい」と繰り返えされていたようで、
きちんと考えた上の販売戦術について支援を求めると、
ふたつ返事で進む・・・
こういうのが当時の強みだったと思います。
カッコよく綴っていますが、戦術のほとんどは、失敗です。
でもそのうち、ひとつ・ふたつが、
先行するライバルのアンリツを圧倒する戦術となります
(そのひとつの戦術が、私が考えたものです)。
特筆したいのが、[失敗を経験することも、大変なノウハウ]だということです。
→以降、絶対実施してはいけない(二度と繰返してはいけない)項目を知るからです。
これは、コンサルティングの場面でも重要なことです。
当時は、責任者とグルーブのメンバーとともに
たくさんの小さい戦術を実施
(ひとつの戦術には、お金をかけない)。
ライバル会社営業部門(正規の大軍)が、実施しないであろう、
いわゆる現代の「特殊作戦」のようなものです。
キーエンス20世紀の直販営業担当者は、中途採用の先輩「アメリカ海兵隊」から
我々新卒の「特殊部隊」に推移していったのだと思います。
その後も続く販売競争で、
アンリツがキーエンスを圧倒する商品を投入しても
(>>>関連記事は、コチラをクリック)、
私が所属する営業所の担当地区では、互角以上の戦いに至ったと思います。
当時、小さいながら蓄積される、数々の成功ノウハウは、
その後21世紀入社の新卒の方々に、正確に継承されて行ったようです。
ただいまの21世紀。キーエンスに入社される、
【超】【最難関】大学または大学院卒業(新卒)の方々は、
アメリカ海兵隊でも特殊部隊でもありません。
別次元・さらにハイレベルだと思います。(私見は別途)。