本日は、平成26年(2014年)4月20日日曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。昨日に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

前回のブログにて、キーエンスが上場した当初の売上高の大半が、黎明期の成長を支えた独占ともいえるオリジナル商品でなく、大手を含む先行する複数のライバル会社と競合する「基本的なセンサ」で占めていたと綴りました。先行するライバル会社のシェアを取る、その強さの秘密も正直言って「謎」であります。
キーエンスの販売戦術である
◆「機器無料貸し出し」も、「ウチは既に実績があるから借りる必要がない」
◆「即納(当日出荷)」も、ライバル会社の代理店には在庫があって「今日注文したら、代理店は明日もってくるよ」とキーエンスが有利になりません。
キーエンスを退職してから、「基本的なセンサ」の某ライバル会社に訪問(面接というより事前の個別の説明会というイメージ)に行った時のことです。この会社には、キーエンス出身者が既に入社しているとの確定情報がありました。とても印象に残った質問があります。「キーエンスが成長しているのは、ダンピング(値引き)しているからだろう?」と批判めいた質問をされました。あまりに事実と違うので、相手方には大変失礼だったのですが、面と向かって声を出して失笑しました(ほどなく、こちらから時間を切り上げて退席させて頂きました)。上場したキーエンスは有価証券報告書で公開されている通り、原価率が低いため、コスト競争力のある企業として「その気になれば売価を下げる余地は十二分に」ありました。
しかしながら、会社として値引きできる体質を保持していても、前線の営業担当者は安易な値引きには、絶対に走りません。(その「値引きの牽制ともなるシステム」については、既に当ブログで綴りました。詳しくは コチラの記事と、コチラの記事)
もちろん、この面談の場で「成果による売上予算管理のシステム」を一切話していません(キーエンスの「成果」という言葉が世に出たのは、日経ビジネス2003.10.27号が初めてだと記憶しています)。面談当日の質問は、あまりにも偏っていたので、この会社への関心が薄れて詳しく説明する気にもならなかったのです。
どこの企業でも、お客さま窓口である営業担当者の交渉力がない為に、受注競争に敗れれば売上高はもちろんゼロ。さらにキーエンスでは、成果金額による管理の為、安易な値引きに走れば実績数字の積み上げが苦しくなり、毎月の目標を達成することは事実上困難となります。これではキーエンスの営業担当者(以前綴ったいわゆるプロの選手)としての存在価値はありません。もちろんすべての営業所で共通していたことではないでしょうが、私の所属していた営業所では、ライバル会社との受注競争に臨む、基本的なセンサおよび精密計測の販売グループには、そんなヤワな営業担当者はひとりとして存在しませんでした。価格競争になった場合、どんな厳しい条件でも「同じ値段なら、あなたから買う」というケースで受注、またライバル会社より高い値段で受注することも決して珍しくありませんでした。キーエンスの見積金額が高くても、他社が安いから即敗北という流れにはならず、必ずお客さまから「買う前提でズバリ相談したい」という一報が入るのです。同じ営業所に配属された新卒入社の同期も、この連絡がひっきりなしだったと思います。私が密かに目標としていたのも頷けるかと思います。

そして、私が所属する精密計測機器の販売グループには、さらに凄腕の先輩がいました。既に廃番になっていると思いますが、ライバル会社が多い、高額のある測定機器の販売に際して、「(ライバル会社が)ドンと値引いて見積提示してもらった方が、商談が有利だ」と飄々(ひょうひょう)とされているのです。実際、価格提示の安いライバル会社と受注競争になる場面が何度もありましたが、大口の数量でも、ほとんど値引き無しで受注されていました。この機種を販売させれば全国に右にでる者はいないという方です。上司である凄腕の責任者も「素晴らしい」と感嘆していた次第です。もちろんキーエンスに接待という手段はありません。この相当の価格差でも受注するという技、こればかりはグループの誰もが真似をできる芸当ではありませんでしたが、「ライバル会社より高い金額で受注する」というのは、グループ全員にとって、そう珍しいことではありませんでした。

キーエンスを退職してから「同等品を高い値段で受注できる」事実を、ウソだ、美談だとハナから小バカにする人もいました。成果による売上予算管理のシステムをわざわざ持ち出して、正しいことだ証明する必要はありません。むしろ、その人の反応から、その人物(営業力)を推し量ることができたのです。実際、営業力のある方は「どうやって受注するの?」と熱心に質問されます。いい表現ではありませんが、いわゆる営業担当者の「営業力を値踏みする」ことについて、最適のエピソードとなったのです。

キーエンスが受注競争で勝ち続けて疾走する理由のひとつは、やはり「直販営業」だと思います。しかし、ライバル会社が「直販営業」というフレームだけを導入しても、キーエンス同様に受注競争に勝てるかというと、決してそうではないと思います。「営業力」の強化を実現するには、中身ある教育にどれだけ時間をかけるかで勝負が決まります。キーエンスの営業力は、スタート時点で高いスキルからスタートしています。凄腕の中途採用者の方の営業のスキルを基本に、絶えず改善されていくノウハウの蓄積です。そして各営業担当者のバラツキをなくすように勉強会を実施、製品知識と折衝・交渉力をバランスよく強化しているのです。

「営業力」。ここでキーエンスを退職した直後の、私の未熟さを綴ります。再就職先を探し始めた頃の勘違いです。キーエンス在職中、年間営業ランキング表彰もされたのだから「営業力」はあるほうだろう・・・、もしキーエンスより「技術力」の高いライバル会社に転職したら、激しい競争から少しは解放されるだろうし、うまくいけばキーエンスに勝てるかも???一見正しい内容です。転職した当初、その通りに進みました。ところが、しばらくしてから気がつくのですが、対キーエンスにしても「(営業担当者という局所的なレベルでなく)企業が、ライバル会社との販売競争に勝つ」ことについては、「技術(商品)力」と「営業力だけでは勝利できません。意外に聞こえるかもしれませんが、BtoB(企業-企業間取引)・訪問型セールスの分野では、あまり知られていない普遍的な勝ちパターンが存在するのです。「競争戦略」を研究し始めたきっかけは、転職した後の「何故?」からです。BtoC(企業-最終消費者取引)の分野とBtoB(企業-企業間取引)は全く別物です。対キーエンスとの販売競争を経て培った「競争戦略」は現在、BtoB(企業-企業間取引)分野の中小企業の支援に際して、新規事業で成功するカギとしても十分に応用できるようになりました。今春、それらをまとめた書籍を執筆いたしました(執筆書籍についてはコチラをクリックしてください)。
『元キーエンス社員の回想、通算100回』にして、学生さんむけ、社会人むけ、そして経営トップ・事業責任者むけの記事をまとめてみましたコチラをクリックしてください)。

UP(2020年8月最新) では、キーエンスとの受注競争を制すには・・・

まず、下記のブログ記事をご覧ください。
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