本日は、平成27年(2015年)9月13日日曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】
土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。

来年新卒入社の学生さん、いよいよ就活も追い込み時期でしょうか?

今年の2月、学生の方むけに、就職に関する無料公開セミナー(詳しくはコチラをクリックしてください)を実施しました。主催側にとってありがたい、とても貴重な時間でありました。
無料で開催とは怪しい?何かの販売や勧誘では?と警戒される向きもありましたが(笑)、
もちろんそんなことは一切ありません。
実は、当方より各種情報をご提供すると同時に、現在(セミナー開催時点での)のお若い方の意識や考え方を、知りたかったのです(もちろん情報は、外部には一切漏えいさせません。)。
会社勤めを卒業した私(正確には、もうひとりキーエンス新卒入社同期の社長も同席したので我々)にとって、お若い方の感性はビジネスを継続するうえで、とても重要なのですが、ただいまは統計データ等から知るのみであります。実際に対談できることで「これは世代超えても同じ」、「なるほど新しい考え」、「これは意外」と、とても勉強になるのであります。
今年、お目にかかった方々は、「就活」について、こちらが驚くほど、みなさん現実をしっかり考えられていました。

さて、就職したくない会社とは、もちろん「ブラック企業」ですね。連日といっていいほど、ネットやマスコミの報道等で氾濫する言葉ですが、一体何が問題となっているのでしょうか?ブラック企業のパターンとして、よくあげられるのが残業代の不払い、そして過労死するほどの残業時間です(違法な行為を行う会社と考えてよさそうですね)。
どの会社がブラック企業なのか?ブラック企業を世間一般に暴きだして、採用に応募しない、不正な点を徹底追及する・・・という話題が絶えません。それが知名度のある会社なら、もはや容赦なしです。

30年ほど前、私の就職活動中は、もちろん「ブラック企業」という言葉はありませんでした。
ほとんどの学生は、給与云々(初任給が横並びで、正直言って将来賃金まで頭が回らない)より、
興味ある業種とやりたい仕事、何より定年まで勤務できる【安定】というのを求めていたのだと思います。
当時は、現在のように中途採用をサポートする人材会社も少なく、若くして退職すれば復活するのは難しいと考えられていました。
そのため、入社早々からキツイ仕事で退職に追い込まれるような会社だけは、なるべく回避したいと周囲も警戒していて、「いわゆるヒドイ会社」を学生間で情報交換していました(もちろん、携帯電話やメールなど無い時代です)。
会社選びには、もちろん「消去法」で臨みました。「連日の飛び込み訪問」「キツイ営業ノルマ」「深夜残業」等が原因なのか、OBが続々退職する特定の業界や会社が、事実存在していました。いわゆる[人を使い捨てる業界]・[会社説明会で一刻も早く逃げ出したい会社]などと揶揄されていました。

ここで、会社選びの際、ブラック企業の対極にある労働者の理想郷?「ホワイト企業」というものを考えてみたいと思います。
現在では、下記のような会社のことを指すような気がいたします。
[1]給料(年収)が多い
[2]残業が無い
[3]休暇が多い(もちろん有給休暇も完全消化)
さて、素朴な疑問なのですが、以上の3項目を完全に満たす「完璧なホワイト企業」というものは
果たして、存在するのでしょうか?
ごく一部ですが、残業が皆無(定時退社)で休暇も多く、給料(年収)が破格に良い会社の存在も承知しています。完璧なホワイト企業に見えますが、実際は放漫経営の場合が多く、結局は資金ショートで倒産した中小企業の事例を、私は何軒も、この眼で見てきています。

後出しのような書き方で恐縮ですが、今回は「正社員」の働き方について語っています。
実際に正社員で勤務する場合、上記3項目のうち、少なくともひとつは得られない(犠牲になるもの)だと考えてよさそうです。
すなわち、
給料(年収)が多い会社は、
残業が多いか、休暇が少ない。
残業が少ない会社は、
給料(年収)が少ないか、休暇が少ない。
休暇が多い会社は、
給料(年収)が少ないか、残業が多い。

私が新卒入社したキーエンスは、もちろんブラック企業ではありません。年間休日も多く同業他社に比べ給料が多いほうでした。但し、会社説明会や入社面接の時点で、連日午後21時台まで残業がある旨、きちんと説明を受けました(残業代はきちんと支払われるが、日々繁忙な為、定時退社は期待できない)。
別の業界に進んだ学生時代の友人は、連日定時退社で休暇も多いが収入は安い・・・こちらもブラック企業ではありません
では、何故「完璧なホワイト企業」が存在しない現実があるのでしょうか?特に、たくさんの企業であたりまえのような長時間残業、その理由について考察してみます。
原因は、グローバル競争云々というテーマもあるでしょうが、本当のところは、いったん採用した正社員を解雇することは、とても難しいからだと思います。(仮に、パフォーマンスが低く、ミスばかりおこしながら反省しない。さらに全く改善の見込みの無い社員でも、正社員であれば簡単に指名解雇はできません)。

つまり、業績が順調なら、比例して人員増を行いたいのが会社の本音なのですが、運悪く、増員後に業績不振に転じた場合、簡単に正社員を整理解雇できない現実があるのです。つまり、余剰人員が発生し人件費が重荷になるケースです。前述の、一見ホワイトなようで、実際は経営破たんした中小企業が、その典型です。
その為、業績上向きの局面で人手不足の場合には、「正社員に残業してもらって、最小人員で乗り切る」に至ります。こういう背景から、「完璧なホワイト企業で正社員として働くこと」を求めて、就活することは無駄なことなのかもしれません。

ブラック企業について不思議に思うこと
ここからも私見です。残業代の不払い、そして過労死するほどの残業時間が発覚すれば、当然問題視されます。後に不払い賃金が支払われた、労災が認められた、民事裁判で損害賠償の訴えを認められたという記事も見ます。
ところが、残業代の不払いや過労死という深刻な事案で、経営者が逮捕されて実刑判決(たとえば懲役刑)を受けたという報道を聞いたことがありません。
前述の通り、
正社員の地位は手厚く保護されています(会社側に厳しい)。

その結果、正社員の残業負担が大きくなる(正社員に厳しい)。

ところが正社員が過労死しても会社(経営者)側には甘い?
このスパイラル、どこか矛盾ありと思いませんか?会社側にも従業員側にも厳しい現実があります。
私には、うまく指摘できないのですが、どこか変えるべきところがありそうですね。
頭のいい政治家の方や、関係監督官庁の方には、是非知恵を絞って頂きたいと思います。