本日は、平成27年(2015年)6月13日土曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。キーエンスを退職して、当時のライバル会社に転職した後も含めて、最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

繰返しになりますが、BtoB(企業間取引)・訪問型営業のビジネス分野で、近い将来、二歩先を行くキーエンス級の強いライバル会社が、次々に出現すると予想いたしました(詳しい記事はコチラをクリックしてください)。そういった事態を予想して、平時のいまから「一歩前進して備える」ことをオススメしているわけです。もちろん、一歩進めることができれば、それは同業の会社に対して一歩差をつけることを意味します。すなわち、競争力が確実にアップするのです。

本日は「顧客対応記録」の話題です。
通常、営業担当者が異動した場合、あるいは退職した場合、納入実績先やアプローチ先のお客さまに「担当者変更」の引き継ぎ、新担当者からの連絡などを行います。もちろん、当然の業務でもあります。

私が所属したキーエンスの営業所同様に退職者が多いためなのか、それとも成長に伴う異動が多いのか定かでありませんが、ライバル会社のアンリツに転職してから、経営コンサルタントとして独立して活動している今日までに「キーエンスさんから、担当者が変更になりました」という連絡が多いという方が、事実としていらっしゃいます。
そんな話しを聞きつけた外部から「そんな状態で、引き継ぎがキチンとできるのか?」と批判めいた発言をする方が、少なからずおられます。
しかしながら、冷静に考えると「担当者変更の連絡」があるということは、きちんと引き継ぎができている証拠に他なりません。実際は、批判まがいの発言をしているご本人や、その会社の営業部門こそが、引き継ぎ業務がまるでデタラメである場合もあって、決して声には出せませんが、時折り心の中で失笑していました。

キーエンスの在職中、訪問であれ電話であれ、顧客対応記録(お客さまとの打合わせ内容)については、キチンと記録することが厳格なルールとなっていました。勤務していた当時、虚偽の記録などは、「カラ出張」なみに大事件であります。1980年代後半当時は、現在のようにPCなどのデジタル機器が普及していなかったので、もちろん手書き記録が主流。私が担当する地区で、入社する7年前のお客さまの対応記録の中に、創業者の直筆の記録を偶然見かけて驚いたこともあります(既に社長業に専念されていましたが、黎明期に営業をされること自体、当然といえば当然ですが・・・)。

そのキーエンス黎明期。後発ながらセンサ市場に参入した当初(当時の社名はリード電機)は、オリジナル商品を展開していました。既に綴りましたが、その中でも「金属板2枚送り検出センサ」(当時は「2枚送り検知器」と呼んでいたと思います)は、ブレス業界のお客さまにとっては、「のどから手が出るほどに」導入したい機器であった為、商談が即受注に至る場合も多かったはずです。そういう状況では、引合~商談~受注までの詳細な顧客対応記録を残す重要度は低かったと思います。それでも、営業部門全体でキチンと顧客対応の記録を愚直に継続する、キーエンスの営業部門は洗練されています。
個人的感想ですが、「強力な商品で飛ぶように売れる状況下」でも、顧客対応を記録する重要性を最も痛感されていたのは、中途採用で入社された先輩のみなさんだと思います。先輩のみなさんのほとんどは、キーエンスに入社される前職が、明らかにキーエンスよりキツイ会社のご出身。数回の訪問程度で受注に至るはずがない業態、あるいは、引合からご注文を頂くまで、数年を要すことも珍しくない個人宅むけダイレクトセールスなどをご経験されている方が、私の周囲にも相当数いらっしゃいました。そのため、一見面倒な業務ともいえる「後々のため記録すること」が、前職の延長としてすんなり受け入れられ、そして我々新卒入社の営業担当者に、その重要さを継承されたのだと思います。

実際、この「顧客対応記録」の手法が、後のキーエンスの成長を支える強みのひとつになります。引き継ぎの基礎資料になることは勿論、キーエンスが新たに参入したライバル会社が複数存在する市場、例えば基本的なセンサや、私が担当した精密計測機器の分野では、受注までに相当数の期間を要すため、継続フォローに欠かせない強力なツールになったのであります。

BtoB(企業間取引)の分野、とりわけ工場や研究所むけの機器を販売する企業の中で、キーエンスのように全営業担当者が漏れなく「顧客対応記録」を徹底している会社は、見聞と経験の範囲内なのですが、多くは無いと思います。
キーエンス以外の企業では、営業担当者レベルで「ばらつき」の幅が大きい印象があります。

一歩すすめるためには、キーエンスのように詳細に記録する必要はともかく、営業部門全体で最低限の顧客対応の内容をキチンと記録する、そして継続されることを、是非オススメしたいところです。
なお、ここで申し上げたいのですが、この営業部門全体で「顧客対応記録」を実施するというテーマは、営業戦術の強化であり戦略ではありません。つまり、営業戦術はあくまで戦術にすぎない為、私はあえて営業戦略という言葉を使いません、
と申しますのも、ライバル会社が多々ある競争の場面では、戦略なきところに築いた戦術は失敗するからです。正しい手順は、戦略を理解してから戦術を構築することです。特に、私が専門とするBtoB(企業間取引)の分野・訪問型の企業では、見事にあてはまると思います。
例えば、運よく付加価値の高い商品の開発に成功し、他社に先駆けて販売を開始しても、売上を伸ばすことができない、付随して高い利益を獲得できないという場面があります。もちろん拡販に失敗することを意味するのでありますが、それはすべて戦略が無いゆえの悲しい結果でもあります。
また、私が提唱する「高い利益を獲得するスピード経営」の視点では、顧客対応記録や情報の共有化することは経営上とても重要なことですが、すべてを即時IT化で対応することについても慎重な立場をとっています。ITによる運用というのも同じく、あくまで戦術の強化にすぎないからです。
もちろんこれらの主張は、競争戦略を理解されれば、簡単に納得されることでもあります(そのため、研修に際しては、まず拙著を使う場合が多いのであります。拙著についてはコチラをクリックしてください)。
経営コンサルタントとして独立後、経営支援先の営業部門には、見積書や請求書の発行名刺の住所録への入力、宛名のラベルの印刷にITを活用することについては、積極的に導入すべきだとおススメしています。但し、「営業日報や顧客対応の記録にITを全面的に導入することについては慎重である立場をとっています。その対案となる最適なフォーマットを相当検討した時期があります。試行錯誤による経験をもとに【顧客対応記録】の手法や前回綴った【営業日報などのツールや、運用について具体的に提示できるに至りました。特に、中小企業や、企業規模にかかわらず新規事業の部門のみなさまには、「目からウロコ」と好評であります。

今回も繰返し申し上げます。
「ある日突然、キーエンス級の強い会社がライバルになった時、対処できますか?」

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