本日は、平成26年(2014年)5月18日日曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。昨日に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

私が勤務していた当時のキーエンスの営業所では、毎月の決算日のイベントである反省会や、勉強会などの会議は原則、定時後に開催されました。但し、所属するグループ内で即対応しなければならないテーマは、営業時間中に行われました。入社一年目の頃は、新人である私の教育として、その場で短時間での指導が繰り返されます。販売グループの責任者以下、先輩のみなさんの指導は「ただ、ヤレ」といったものではなく、「この場合の対応はこのように、もしダメならこういう対応」といった具体的な手法です。厳しく感じることも多かったのですが、私の上司である責任者の方針「気合いでモノは売れない」という、脱精神論に沿った指導方針は徹底されていました。まさに実戦現場で実践できる教育のおかげで、お客さまとの折衝やライバル会社対策など、あらゆる商談場面に対応できるようになります。いま回想すれば、セールスの経験が全く無い新卒社員の私が、短期間で成長するのも頷け(うなづけ)ます。時を経て私自身が営業するにあたり、指導頂いたお三方の各々3通りの営業手法を切り替えて使えるようになりました。まさに「いいとこ取り」です。 本当に私は恵まれていたのです。入社二年目になると、私への教育という時間はめっきり減って、グループでのミーティングは作戦会議。いわゆる「軍議」が中心でした。
軍議の主要テーマはふたつ。
◆ひとつは
ライバル会社との受注競争の案件における提示価格の検討です。時とともに競争環境は激しくなります。各担当から意見(経験)を求められます。 世間一般の会社と同じく、キーエンスでも「競合案件は必ず受注する」方針です。値引きを実施して成果額(用語はコチラ)が減っても、必ず受注することが求められます。(受注できなければ、もちろん実績となる売上高はゼロ。いままでのフォローがすべて無駄になるだけです)。キーエンスの営業担当者は皆、きちんと商談案件を継続フォローしている為、「気がついたら、ライバル会社に先を越されて失注した」ということは、当時はまず起こりえませんでした。万一、営業担当者のフォローミスによって受注競争に敗れた場合、正直言って「事件」であります。
また、受注競争における値引きに際しても、ルールがあります。ライバル会社の機器が、キーエンスより安い価格で提示されても、「はいそうですか」と簡単に値引きの承認はされません。値引きの理由をリーダーや責任者から尋ねられて「訪問した結果、このライバル会社の機器と受注競争になっていて、提示された価格はいくらであった」とだけの情報だけでは、それが真実の報告であっても、営業担当者としては失格。厳しく叱責されるだけです。叱責される理由は割愛しますが、キーエンスで営業経験のある方なら、みなさんおわかりだと思います。このあたりも「キーエンスの営業担当者にはバラツキがない」所以(ゆえん)のひとつでもあります。「競合案件だ、大変だ、相手より安くする必要がある」と大騒ぎしているだけの営業担当者は、キーエンスでの存在価値がありません。
◆そして、もうひとつのテーマ
毎月のグループ売上目標予算達成にむけての「作戦会議」です。毎月の決算日が近づくと、各販売グループで責任者やリーダーを中心に先輩社員を交えて合議がありました。これはどこの会社でも見られる光景だと思います。月の後半、決算日が近づくにつれて、販売グループの目標予算達成のために、どの案件を今月売り上げるかという検討があります。予算達成が見えない場合、来月以降に発注・売上予定の案件を「前倒し」できないのか?世間一般の会社と同じです。これを実現するには、もちろん営業担当者の折衝能力が問われます。ここにもキーエンスの営業の強さがあります。

新卒で入社した一年目は、私が販売グループの足を引っ張る場合が多かったのですが(キーエンス在職中の私の成績はコチラ)、決算日が近づいた頃の先輩方の追い込みは、すさまじいものがありました。どういったテクニックなのか、いまだに謎です。各個人の秘伝だと思います。高額の測定機器にもかかわらず、ある先輩はお客さまを訪問して、さらりと数字を積み上げます。そしてグループの責任者は、分厚い見積書の控えをめくりながら何かを瞑想。電話を握り「前回、おっしゃっていた例の・・・」記憶力が抜群の方なので、先方の社長さんとの数か月以上前の打ち合わせ内容が、完全に頭に入っていたのだと思います。そして受注に至ります。
入社二年目は、販売グループに恩返しができました。オフィシャルな場面では「さん」づけのキーエンスですが、小声で話す軍議の際は、「ここは、立石!なんとかしてくれよ」。後輩の私には、これが心地よかったりします。
「(個人目標の予算は達成しますが)さらに追加として、おいくらだせばよろしいですか?」
具体的な金額を提示されて、「はいはい」と小声で頷く(うなづく)さまは、まるで「打ち出の小槌(こづち)」とか(笑)
毎月の決算日直前に、相当数の案件について受注前倒しを実現できました。もちろん、お取引頂いたお客さまのおかげです。この私の秘策も、まことに申し訳ございませんが、先輩方同様の秘伝としてブログでは非公開とさせてください。
『元キーエンス社員の回想、通算100回』にして、学生さんむけ、社会人むけ、そして経営トップ・事業責任者むけの記事をまとめてみましたコチラをクリックしてください)。