本日は、平成30年(2018年)9月8日(土)
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント
元キーエンス(→アンリツ)社員、
中小企業診断士の立石です】

B2B(BtoB:企業間取引)製造業・訪問セールスビジネスを展開する企業の
経営トップの皆さまが、ノドから手が出るほど欲しがる
「考えて成果を出す営業担当者」について綴っております。
その優秀な方を、どのように採用しますか?
今日はそんな話題です。

キーエンスの黎明期は、大手企業と競争回避したニッチ商品での展開。
創業者の考えた『テスト機無料貸出のシステム』は、
業界初の画期的な売り方だった思います。
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当時展開した、キーエンスのニッチ商品は、
大手企業が参入してこないメリットがあり、
利益率が高いものの、市場自体が大きくない。

そして、私が新卒入社した1987年春、
上場を控えたキーエンス。
激しい競争環境下に突入して間もない頃です。
さらなる成長を目指して、ニッチ商品で得た利益を原資に、
いくつかの新分野に順次後発参入、先行する複数の大手ライバル企業も
相手にする本格的な競争を志向された頃であります。

現在のキーエンスの商品は、
完全オリジナル・高性能・高機能・ユーザニーズ網羅・独走という言葉が、
全てあてはまります。
しかしながら、30年前当時にライバル会社と競争志向した商品は、
先行する会社のリバース(模倣)がメインで、
製品力で完全優位だった記憶は、正直なところ無いです。

当時は、大きく分けて2つの競争がありました。

・汎用品センサでの競争(単価は安く、お客さまが製品を熟知されている場合が多い)。

ライバル会社と同等品で後発参入。
初めて導入される小口のお客さまへの対応とともに、
既に大手工場などで大量に購入されている・・・そのライバル会社のシェアを奪うという、ミッション。

そして、もうひとつ私が担当した

・精密計測機器での競争(当時キーエンスでは高額商品、お客さまの認知度が低い商品)

ライバル会社(後に私が転職したアンリツ)と基本原理は、ほぼ同じ。
ライバル会社に比べ安い、サイズが小型というメリットがあるものの、
精度・性能では全く及ばない商品。
大手ライバル会社のシェアを奪うとともに、新規に購入して頂ける
お客さまを増やすことが、ミッション。

とにかく、競争志向した新分野への参入商品は、
簡単に売れるものではないのです。
それまでのB2B(BtoB:企業間取引)製造業・訪問セールスというビジネスで、
存在したであろう『御用聞き営業』のスタイルでは通用しない、
競争環境下における【新しいセールススタイル】が求められたのであります。

キーエンスの創業者が語られた、
「内勤業務は勿論必要であるが、文系の職種で、
もっとも重要なのは営業(営業部門・営業担当者)である」が頷けるかと思います。

新しいセールススタイル構築にむけて(中途採用で通用する人材)

私が入社した1987年当時、営業部門を含めて先輩のほとんどが中途採用で入社された方です。
営業担当者の採用基準は公開されていませんでしたが、前職は間違いなく「キツイ仕事」。
さまざまな業界からの転職者が多かったのですが、お話しを伺うと酷い会社が多く、
長時間労働(中には毎日、最終電車で帰れない)、残業代未払い、休日ダダ働き、
キツイ売上ノルマ、連日の飛び込み訪問、成績不振者に対するパワハラ、
大量採用で、入社1年以内に大量退職(入社後1週間を待たずにに退職者続出、寮から脱走して連絡が取れない等々)などといった会社・・・
業界や社名は出しませんが、なかには展開しているビジネスそのものがブラック(詐欺まがい)という
会社でお勤めの方も、少なくなかったです。
(もちろん、キーエンスに転職するには、当然そのブラック企業を辞められるわけですから、
正しい精神構造をお持ちである方々だったことには、間違い無いです)。
前職がキツイといっても、まさにキツイの究極だと思われる、ある共通点がありました。

【誰もが簡単には売れない】商品・サービス

つまり、市場に同業者がたくさん存在していて、競争が激しすぎる商品・サービスを展開する企業での営業経験です。
購入希望、商品・サービスの説明希望、価格問い合わせといった
「お客さまからのお問い合わせ(引合)」が皆無に近い(絶望的な)企業で働かれていたわけです。
だからこそ、中途で入社された営業担当者の先輩全員が、
お客さまからの問い合わせ(引合)の、ありがたさを痛感されていたわけです。
そのため、いまやキーエンスのお家芸である
電話受けの対応のよさ(お待たせしない、社内電話は切って対応する、
会議中でも中座して即対応する)や、
いったん引合のあったお客さまへの継続フォローが、
早期に(ひとりでに)浸透したのだと思います。

ここで、キーエンスの新しいセールススタイルにリンクさせてみますと、
汎用品センサでの競争(単価は安く、お客さまが製品を熟知されている場合が多い)分野で、
キツイ会社を経験された、中途採用の先輩営業担当者の強みが活かされます。
全社で広告・宣伝も注力していたので、お客さまからの引合が寄せられる。
当初よりキーエンスでは、新規の飛び込み訪問は禁止されていました。
現在はその必要性が無いと思いますが、
飛び込み電話で見込顧客も増える(但し、現在のようにブランド力もありません。
電話を受けた方から「キーエン?うちは投資はやらない」ガチャリと電話を切られたりは、私も体験しています・・・トホホ)

汎用センサの拡販で、ライバル会社との競合する商談においては、
特に折衝力が重要でありました。
キーエンスは、直販営業(またはお客さまに直接アプローチ)のスタイル。
ライバル会社やその代理店を圧倒する、業界では珍しい強さだったと思います。

まだ担当機種が決定していなかった、営業所に赴任した当初の私。
この部門の先輩に、同行訪問させて頂く機会がありました。
大口の商談。『購入先はキーエンスか、競合他社か検討中』というお客さまに訪問。
当日の受注に持ち込む手順と姿勢に、相当圧倒されました(もちろん、その場で受注)。
当時、汎用センサの営業部門では、引合が来れば、高い確率で受注に持ち込むという、
凄腕の先輩が多かったです(前職で最も苦労された、引合の獲得が、
クリアされたキーエンスの環境下で、まずは水を得られたのだと思います)。

但し、ここでいう折衝力のスキルというのは、教育・研修でルーチン業務に落とし込むことができます
(当時のキーエンスでは、少人数の販売グループで、マンツーマン教育で伝承されるものでありました)。
高度なレベルですが、あいさつ等の接客マニュアルを身に着けるイメージです。
後で、気付いたことなのですが、
さきほどの「いま、この場で決める」という凄腕の先輩の交渉術も、ひとつひとつの会話のやりとりに、
巧妙な戦術が隠されていました(考えて行動されているのです)。
その戦術を分析して意味合いを把握、パターンとして覚えてしまえば、
あちらこちらの商談で応用ができるのです。

【考えて成果を出す営業担当者】を渇望されている、経営トップの方へ

中途採用では、業界経験者を採用される場合が多いと思います。
それも正しい選択だと思います。

但し、今回のテーマである、
現在の激化する競争環境下で、現有商品を大量に売って・売って・売りまくって、
売上総利益を獲得する【考えて成果を出す営業担当者】というのは、
業界経験がなくても、キツイ会社を経験された方の中にも、
いらっしゃるということを、是非知っていただきたいと思い
以上を綴りました。
今後の採用活動において参考になれば幸です。

さて、もうひとつの新しいセールススタイル
(こちらは難題:引合をいかにとるか?)
私が担当した
・精密計測機器での競争(お客さまの認知度が低い商品)。
この商品は折衝力に加えて、いかに引合をとるかが課題というか、
それが難題。

成果を出すには、「さらに考えて行動する必要がありました」。
この引合を獲得する手法も、
B2B(BtoB:企業間取引)製造業・訪問セールスの
【新しいセールススタイル】であり、
業界を問わず必要な手法だと思います。
続きは次回に。