本日は、令和元年(2019年)8月6日(火)
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント
元キーエンス(→アンリツ)社員、
中小企業診断士の立石です】

『あれ?ずっと入金されていないな。何故???』

営業部門で異動された方で、前任者の納入履歴を照合している際に
経験された方はいませんか?
お客さまに納入されたはずの製品、長期間経過しているのに入金がなされていない・・・

まず、ピンとくる原因。
請求忘れか、お客さまの支払い処理が済んでいない。
乱暴な言い回しですが、取りっぱぐれ(取り損ね)が生じているわけです。
正しい処理がなされていない状態で、結果として経営上看過できない内容です。

私が、経営コンサルタントとして独立する直前に手にした、
(京セラ創業者)稲盛氏の著書、【実学】(日経ビジネス人文庫)。
主に会計(学)に関する、実務の書籍であります。

黎明期は、上記と同様の問題を経験されたようで(同書P65~)。
製品とお金の流れを把握するため、納入する製品に伝票を必ず添付するという
ルール(一対一の対応)を徹底したと、綴られています。

同じく『一対一の対応』を徹底していたキーエンス

ただ今は5000億円企業キーエンス。
私が入社した1987年(前年度の売上実績73億円)。
直販のスタイルで、当時の取引顧客数は、大手から小規模企業まで計3万社。

単価数千円~の製品を、1個単位でも受注。
連日、受注分の出荷に加えて、無料テスト機、修理期間中の代替機の総計で、
大量の出荷となります
(宅配業者さんは、朝夕などに『荷物ありませんか?』と
顔をだされるのが一般的ですが、キーエンスでは、
朝一から大型トラックが会社に横付けされ、満載になったら出発。
次の配車という運送業者さんにとっては、大口の得意顧客であったようです)。

現在の通販全盛時代では当たり前のことですが、当時のキーエンスでは、
業界では珍しく、受注案件ひとつごとに、伝票を添付して出荷。
まさに、京セラと同様の『一対一の対応』を貫いていたのであります。
効果はもちろん、営業担当者の請求忘れを防いで、
お客さまからの入金時に、売掛金分を即特定できる、
また、未入金分を即照合できることに貢献します。

なお、キーエンスの営業部門では、伝票発行することは、
システム的に不要でありました。
営業部門で、伝票発行しないというのは、当時の出荷部門(本社)で一括した方が、
合理的だという判断だったと思います
(前回綴った、経済原則での経営判断であります)。

当時、世間ではパソコンやプリンタが事務所に普及していない無い時代です。
伝票や送り状を、都度手書きする手法で、即日出荷に対応するには
大幅な人員増が必要です。
もちろん、キーエンスでは、安易な増員を行わず。
本社に大型コンピューターとプリンタを導入し対応していました。
特筆すべきは、対応する人員。請求書は経理部門で発行されるのですが、
わずか数名で対応していたと記憶しています

間接部門は、自動化と効率化を図り、むやみに人員を増やさない・・・
まさに、キーエンスの経営理念である
『最小の資本と人で最大の付加価値(当時は経済効果とも言いました)をあげる』通りであります。

たしか入社した4月の土曜日。
さらに処理能力の高いコンピューターを、
導入(入れ替え)する工事があったと記憶しています。
(電算システム系の部署に配属された、同期のひとりが、
同期で最初の業務をこなしたと話題になったので、記憶に残っています)。

正確な金額は、思い出せませんが数億円の投資!
売上高73億円の企業では、大変な金額だと思います。
それでも、B2B(BtoB:企業間取引)、しかも通販業でない
当時のキーエンスが、
この『一対一の対応』にこだわっていたのは、
京セラを参考にしたのは、間違いないと思います。

さらに、キーエンスの創業者は、京セラと同様に
製品とお金の流れを伝票で管理するとともに、
営業所からルーチン作業(伝票作成・送付)を排して、
営業事務(主に女性)の方にも、より付加価値の高い業務を遂行することを
期待していたのが、容易に想像できます。
営業所での通信費と同じく、本当に必要なものには、お金を惜しまない)。

効率面だけでは無い『意外な効果』

キーエンスの営業部門では、伝票発行することは、システム的に不要と綴りましたが、
実は『禁止事項』でもあったのです。
その意外な効果は、京セラ創業者の稲盛氏の著書、【実学】(日経ビジネス人文庫)で
知ることになります。

続きは次回に。