本日は、平成30年(2018年)9月11日(火)
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント
元キーエンス(→アンリツ)社員、
中小企業診断士の立石です】

B2B(BtoB:企業間取引)製造業・訪問セールスというビジネスを展開する企業の
経営トップの皆さまが、ノドから手が出るほど欲しがる人財(人材)、
激化する競争環境下で、「考えて成果を出す営業担当者」について綴っております。

前回は、ライバル会社との競合する案件を次々受注する、
【折衝力】を身に着けた営業担当者について、
ご紹介いたしました。
業界経験がなくても、【誰もが簡単には売れない(競争が激しい)】、
そういった商品・サービスを取扱っていた会社での営業経験が、
活かされるという話題でもありました。

本日は、B2B(BtoB:企業間取引)製造業・訪問セールスのビジネスにおいて
【考えて成果を出す営業担当者】の中で、同じく希少である
『【効率的に】【有望な引合】を獲得できる人』をご紹介いたします
(誠に僭越ではございますが、私もそのひとりに当てはまると思います
これを実現できたため、営業成績が急伸、グループの先輩方を差し置いて
翌年度表彰されるに至りました)。
→表彰が決まった瞬間の回想は、>>>コチラをクリックしてください。

商品やサービスを売るという場合、
まずは前段である、
(お客さまから)『引合』を寄せられることが重要です。
折衝力のある方も、とにかく『引合』があってこそ、初めてアクションができて、
自身の強みを活かせるわけです。
【誰もが簡単には売れない(競争が激しい)】商品・サービスを取り扱う企業では、
お客さまからの『引合』が少ないからこそ、
営業担当者が終日飛び込み訪問という、厳しい施策をとられるのだろうと思います。

【効率的に】【有望な引合】を

今回、『【効率的に】【有望な引合】を獲得できる人(営業担当者)』と表現しました。
30年前にキーエンスが必要とし確立された
もうひとつの【新しいセールススタイル】です。

【効率的に】とは、
もちろん、飛び込み訪問を繰り返すといった
スタンスではありません。

また、引合についても
【有望な引合】(=売れる見込みの高い引合)であることが
重要です。
「興味があるので説明希望」という引合がたくさん寄せられて、
全ての引合に正確な対応をしても、全く売れないとなれば、
バタバタ貧乏に他なりません。

その30年前のキーエンス勤務時代・・・
私が担当した
・精密計測機器での競争(お客さまの認知度が低い商品)。
この商品は折衝力に加えて、いかに引合(特に有望な引合)を獲得するかが
課題というか、それが難題。
成果を出すには、「さらに考えて行動する必要がありました」。

当時のキーエンスは、
新規取引先を増やすことが命題。
新規のお客さまから引合を寄せられるようにと、
本社の各事業部では、ほぼ全商品について、
広告宣伝に注力していました。

その規模は相当なもので、あらゆる媒体を活用した
全国むけ・全業界むけ・たくさんの頻度というイメージです。
接待交際費は勿論ゼロである一方、必要なものにはお金を使うという
キーエンス創業者のブレの無い方針です。

当時、私が所属した精密計測機器の事業部門では、
まず引合件数で、各営業所単位でばらつきがありました。

どこよりも厳しい営業環境に身をおく
(引合の件数は少なく、有望な引合も少ない)

ある営業所では、引合件数が相当多く
フツーに対応すれば、黎明期のニッチ商品のように
意外と簡単に売れる(そこで勤務経験のあった先輩談)。
『テスト機無料貸出のシステム』で、自然と受注も増える。
・・・いまだからこそ明かしますが、
やっかむ外野からは、楽な販売グループとも揶揄されていました

ところが、同じ商品を取り扱う、私が所属した営業所の
販売グループは、引合の件数自体が少ない(営業所単位で最低)。
その事実はともかく、
引合が、受注に至る比率も全国最低。

メンバーは新卒の私を除き、(先日綴りました)折衝力に秀でた中途採用の先輩方。
凄腕揃いなのに・・・なぜか、バカ売れする人もいない。
そういう経緯で、
所属する販売グループ全員が、引合への対応をなまけている印象を
持たれてしまいます。
ところが、営業担当者に等しく求められる日々の活動目標は、
ほぼ全員がクリア、訪問時に「デモ機持参で実機PR」も漏れなく実行
・・・それでも、その機種の売上高が伸長する実感はありませんでした。

地区特性(市場性の差)というカラクリ

所属した販売グループで、この機種が売れない理由は2つ
・先行するライバル会社(アンリツ)の製品より廉価だが、精度が全く及ばない
・安いといっても、工場で通常使用している別の方式の機器よりも、はるかに高価
(高くてとても買えない)

後で判明するのですが、
よく売れる営業所と、私が所属した営業所では
実は地区特性(市場性)の差があったのです。

この地区特性(市場性)の差は、
精密計測の分野に限らず【測定機器】の全業界に
共通する内容であることには、まず間違いないと思います。

それでも本社の幹部から、販売グループの責任者に激が飛びます
何故売れないのか?!

残念ながら、当時のキーエンスには、地区特性(市場性)の差を
考慮しての目標予算設定という考えはありませんでした。

ゆえに、等しく営業担当者は同じ負荷、
ほぼ等しい売上予算目標(正確には成果目標)であります。
(用語:『成果』については、>>>コチラをクリックしてください)。
つまり、私の所属する営業所の販売グループは、
とても厳しい環境下にあったのです。

特注や改造には一切対応しない方針もあり、
売れないものは、売れない・・・
フツーならここで、ギブアップもアリですね。

あるいは、他部門への責任転嫁で乗り切るパターンでしょうか?
たとえば、製品力(精度)が低いから売れない、
本社の広告宣伝の手法が悪いなどと、
大声で騒げば、放免される会社もあることでしょう。

もちろん、勤務していた当時のキーエンスで、以上のような発言は
絶対に】【絶対に】許されるはずがありません。一切の弁明は許されないのです。

入社1年目の晩秋に責任者と話したところ・・・
(何度もブログに登場頂いた、人生の恩師のおひとりです)

地区特性(市場性)で、苦しいのは仕方がない。
そんな中でも、購入されるお客さまが必ずいるはずで
そのお客さまからの引合(特に売れる見込みの高い【有望な引合】)を
増やすことが肝要だと。
何か有効なPR方法があるのではないか?
新しい取組みの開始です。
そこからが試行錯誤の毎日が始まります。

【ヒアリング&提案営業】がスタンダードに

当時、キーエンスの全営業担当者は、
日々の活動とともに、将来の売上(成果)を増やす為に
ひとりあたり、月に3つほどの施策(たしか「個人政策」と呼ばれていたと思います)を
実行する義務がありました。
ただ、営業所単位の施策では、本社に比べれば使える経費にも限りがあります。
お金をかけず、あれこれ実施(いまでいうテストマーケティング)して、
効果があれば広げるというパターンです。

結果、【ヒアリング&提案営業】という手法に、
たどりついたのです。
この手法のおかげで、逆境を跳ね返して、私自身と販売グループの業績が
恐ろしいほど伸長できたのだと思います。

お客さまより有望な引合が寄せられれば、業務の半分は終わったようなものです。
日々の、先輩による折衝力強化指導(当時は厳しい・いま思えばとてもありがたい)もあり、
ライバル会社と競争となっても失注する心配はありません。

ところが、この【ヒアリング&提案営業】の実践で予想外の結果がでます。
不思議なことに、商談段階でライバル会社が出現する機会が激減、
つまり、競争を事前に予防する効果(競争回避)もあったのです。

この【効率的に】【有望な引合】を獲得する【ヒアリング&提案営業】の戦術は、
私が所属する精密計測機器の販売グルーブ全員→事業部の方針となり、
そして、私が退職後ほどなく全社に浸透、キーエンスのスタンダードになったはずです。
その確信を持つ根拠は、私が退職した後、発刊されたキーエンスのカタログを見て、
容易に理解できたからです。

そして、ライバル会社のアンリツに転職後、
当時のキーエンスには浸透していなかったであろう
マンツーマン」手法をも取り入れて、
【ヒアリング&マンツーマン&提案営業】に進化、
有望な引合を獲得する手法は、ほぼ完成に至ったと思います。

以上の手法は、B2B(BtoB:企業間取引)製造業・訪問セールスのビジネスで、
現在においても、効率的に売上高を伸長させる、最強の仕組みのひとつに間違いありません。

アンリツで確立された手法は、有望な引合獲得だけでなく、
営業部門から発案される(顧客ニーズ先取り)の新商品開発にも有効でありました。
たとえば、こんな商品

次回は、以上のような【ヒアリング&マンツーマン&提案営業】ができる希少な人財を、
いかに御社で揃えるかというテーマについて綴りたいと思います。