本日は、平成28年(2016年)7月18日月曜日・祝日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 元キーエンス社員、中小企業診断士の立石です】

本日は、みなさまの会社が「真似できるはずのこと」です

キーエンスは、工場を持たない企業(ファブレス企業)であります。
経営コンサルタントとして独立してから、ふと気がついたことがあります。それは、工場を持たないキーエンスでありますが、工場で実践される『合理化の3S』が、営業部門を含む全職場で徹底されていたという点です。これもキーエンスが高い営業利益(/営業利益率)できる、ひとつの秘訣だと思います。

実践したい『合理化の3S』

有名な合理化の3S、英語の頭文字がすべて「」です。
Simplification 単純化
Standardization 標準化
Specialization 専門化
もともとは、工場の合理化で、意識して取り組みたいことであります(余談ですが、中小企業診断士試験では、たまにSafetyと混同させる設問が散見されますね:1次試験受験される方、要注意ですよ)。
私が、キーエンスに入社した1987年当時、以上の『合理化の3S』を標榜し推進するといった、特段の活動は皆無でありました。ところが、日々の社内での活動・業務フローのほぼ全てが、この『合理化の3S』に沿ったものとなっていたのです。

まずは、その[1] Simplification 単純化

既に綴りましたが(コチラをクリックしてください)、私が新卒入社した、1987年(昭和62年)当時のキーエンスでは、即納体制が確立していました。しかも、当日の決められた締切時間までに、営業部門から依頼されたものは、【例外無く】【自動的に発送される】のが、厳格ともいえるルールでありました。
現在は、ITをも駆使した商品センターを持たれているようですが、勤務していた当時は、本社(現在の摩天楼のような高層ビルでなく、はるかに規模の小さい、高槻の5F建の建物です)から、全商品を出荷していました。
当時からの【お客さま宛直接販売】という方針の下、小口案件の注文も多数あるわけです。入社した年に売上高が100億円を突破。浅い記憶ですが、当時の取引先が30,000社を超えていたと思います。
大手企業の他、小規模事業者との直接取引で、センサ1個から注文を受けていたため、相当数の梱包・出荷なのであります。営業‐本社間に出荷・販売管理を結ぶオンラインなどは存在しない時代です。そんな環境下で、最少の人数で実現するには、もちろん、営業⇒出荷部門への依頼についても、【単純化されたもの】でなければ成立いたしません。
例えば、お客さまから『注文いたします。本日発送してください』といったご依頼があった場合。
キーエンスのような即納ルールが確立していない企業では、営業部門から出荷部門に「本日出荷できますか?」等々の【依頼】【折衝】【回答待ち】【督促】【確認】等の、連絡業務が生じます。これらの業務は、単純化に反した「複雑・煩雑な業務」だとお気づきだと思います。即納体制を目指すなら、これらの「複雑・煩雑な業務」を、真っ先になくすことが必要です。
キーエンス勤務時代。出荷部門への連絡業務といえば、特定の商品で『大口案件』があった場合のみでした。本社に「事前に連絡する」といっても、折衝や回答待ちといったこととは無縁。電話に出た担当者に「一報」の程度の内容で、その電話の場面で即了承されます。了承された後は、【誠実な約束事】として、自動的に・確実に出荷されます(後で「実は出荷できませんでした」などは絶対にありえないことで、キーエンスでは大事件になります)。
そして、営業部門から【(本当に出荷されたのか)確認の連絡】も不要(正確には、禁止されていました)。うっかり確認の連絡などしていたら、逆に厳重な注意を受けてしまいます。確認の連絡という行動は、【単純化】にも反しているからです。もちろん、【単純化】がベースとなる業務フローの実現の背景は、キーエンスの業務に、人為的ミスは介在してはならないというルールの存在と、ルールを守る全従業員の存在こそが、それをささえていたのです。

利益を圧迫する【複雑化】

企業では、正確性を求めた結果、業務が複雑になっていく場合があります。
例えば【人為的ミス】が発生した場合であります。正直いって、どこの企業でも人為的なミスがゼロとなるのは、なかなか難しいことだと思います。
例えば、お客さまから『注文した商品の構成品の一部について不足』『しかも、同じミスが何度も繰り返される』といった重大なクレームが発生・・・
それに対して、まずは今後の対策を協議することとなるのでしょうが、「二重のチェック体制の構築」も検討されます。つまり、ひとりでなく、もうひとりと共に業務を行う(構成品の不足を発生させないように注意する)といった対策です。二重のチェックという対策について、お客さまは納得されるでしょう。一方で、自社にとっては人(工数)の増加につながり、確実に利益を圧迫いたします。