本日は、平成26年(2014年)11月16日日曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】

土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。キーエンスを退職して、当時のライバル会社に転職した後も含めて、最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)

本日は、有給休暇の話題です。経営コンサルタントとして独立した現在の私には、全く無縁のものですが・・・
付与される有給休暇を取得するのは、働く人の権利です。有給休暇を取らせない、しつこく取得の理由を聞くというのは明らかに違法です。しかしながら、突発的に受注が殺到している製造部門や、年末年始の挨拶回りがある営業部門等の繁忙期に休まれては、会社側も困ります。そこで会社側は、有給休暇取得する日を、別の日に変えてもらうことができます。つまり、有給休暇というのは取得ができるが、当初希望した日に取得できない場合もあるといったところですね。もちろん、会社の繁忙期に有給を取得しようと目論む、KYというかモラール(士気)の低い社員は、普通存在しないはずですが・・・。
私のキーエンス勤務時代。もちろん法令通りの年次有給休暇が付与されていました。有給休暇取得に際しては、上長(私の場合は営業所長)に事前承認を受ける手続きが必要でした。その申請用紙があったと記憶しています。ところが、事前に申請して有給休暇を取得できたのは「忌引」の事由程度だったと思います。
いくら健康体とはいえ、私も病欠する場合がありました。欠勤の場合、朝一に体調不良でグループの責任者と上長に、当日休む旨を電話連絡します、そして休む日も、顧客訪問で外出中と同じく昼と夕方に定時連絡するルールがありました。一方で、事後申請で欠勤扱いでなく有給休暇に振り替えて頂けた記憶があり、それはありがたことでもありました。
キーエンス勤務中、「有給休暇を取得しにくい雰囲気」があったのは確かです。もちろん、有給休暇を取得してはならないという方針や通達や命令などは、一切ありませんでした(そんなことがあれば法令違反で、いまでいうブラック企業の仲間入りになってしまいます)。すすんで有給休暇を取得しにくいという背景は、毎日の売上(成果)進捗の確認という「仕組み」から醸成されたものだと考えています。全営業担当者の数字意識、すなわち毎月の予算目標必達の意味からも、常に一日あたりの売上(成果)を意識することとなっていました。月の売上(成果)予算を、土日祝日を除く実働日で割れば、1日当たりの売上(成果)予算が算出されます。基本は毎月の売上予算の達成を求められるのですが、毎日、現時点での進捗が良いか悪いかも重視する関係上、気安く休んでいられないのです。
その関連なのですが、有給休暇の取得を巡って、所属する営業所で一悶着(ひともんちゃく)あったのを記憶しています。先輩のひとりが、交通の不便な地方の友人の結婚式に招かれていて、地元の盛大な披露宴と風習で当日は帰れない(帰してくれない)のが確実。そこで翌月曜日の有給休暇取得を申請されましたが、即時却下されました。
『今月(予算)達成する見込みはあるのか?』の問いに対して「必ず達成いたします」(有言実行の方で、その月は実際に達成されました)。ところが、ただいまの営業所全体の売上(成果)進捗状況(が悪い)を理解しろ云々で、承認されませんでした。結局、この先輩は日曜日の夜行列車を利用して月曜日の午前、始業時間を遅れて出社し通常勤務されました。遅れて出た当日勤務分を有給休暇として扱って欲しいと申請されました(いわゆるタダ働きを自ら志願されたのです)が、即却下。当日は遅刻勤務扱いにされたと思います。規則云々より、何かが欠如していると感じました。何より、業務に支障がない状況での有給取得の事前申請を認めないというのは、8時30分始業時間を、30分繰り上げるのと同じく不合理の極みです。本件も、私が心酔した創業者の方針で無いのは明らかだと思います。所属した営業所で、いつか労働争議が発生するのではないかと、内心ヒヤヒヤしていました。もちろん現在のキーエンスがどうなっているのかは不明です。
転職したライバル会社のアンリツでは、有給休暇の取得の手続きは至って簡単でした。申請用紙など一切存在せず、予定表を兼ねたホワイトボードに「△(さんかく)」の記号を記入すれば、それで完了でした(申請・自動承認のイメージ)。希望日に取得できないというのは、よほどのことです。もちろん各自が、繁忙期を回避するという意識があったと思います。また、アンリツでは労働組合が組織されていました(管理職等を除く全員が加入)。有給休暇取得の少ない担当者が所属する部門の管理職に対して、組合から都度注意がなされていたと思います。
私自身、平日に有給休暇を取得して、自己啓発として(ポケットマネーで)、マーケティング講座を受講したりしていました(結果的には、期待したBtoBの分野では無かったため、期待外れのケースが多かったのですが・・・)。
また、休日が土日でなく、平日取得となる流通等の業界の知人と交流が図れる楽しみもありました。会社の外に、あれこれの交流や情報流ができたおかげて、戦略・戦術などの思考や、対キーエンスを含む販売競争に勝ち抜く普遍的な手順を模索できました。以前綴った顧客情報管理̪システムの必要性も、BtoC(企業ー一般消費者間)ビジネス分野という外部の方との交流で、ヒントを得たのであります。キーエンスを退職後、アンリツに転職して年収が下がりましたが、「自由な雰囲気のなかで、自主的に」の環境を大いに満喫させて頂いたおかげで、得るものも多かったのです。

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