本日は、平成26年(2014年)3月8日土曜日
【東京・四ツ谷の経営コンサルタント 中小企業診断士の立石です】
土日・祝日のテーマは「バラエティ」です。先週に引き続き、私が新卒で入社した株式会社キーエンスの話題です。当時のキーエンスは中小企業から大企業へ飛躍する頃でありました。現代の中小企業経営者に参考になることも多いと思います。私の頭の中の記憶を綴りますが、もう四半世紀以上過ぎたので、ボンヤリした内容かもしれません。最近は何事につけ日記を書いておけばよかったと後悔する日々です(笑)
前回、キーエンスの営業担当者は売上金額でなく、利益額で管理されると綴りました(社内では「成果額」と呼んでいた記憶があります)。電卓で簡単に答えがでる事例計算はトライして頂けましたか?お尋ねする際に、数値はすべて仮想で出題しましたが、圧倒的な差異があるとご理解できたと思います。
その解答になりますが、当月10台の販売予算の場合、仮に一律20%値引きをすると、一般的な会社の売上金額の管理では13台で予算達成。ところがキーエンスの成果額管理では17台の販売で、ようやく予算達成ということになります。
BtoB(企業間取引)で営業職の経験のある方から見れば、利益管理というものが相当厳しいものだと感じるはずです。その一方で、「不用意に値引きを行う営業担当者」に対する牽制・ペナルティとしては効果もあります。BtoB(企業間取引)においては、いったん値引いて納入すると、追加発注の際に値段を戻して(事実上の値上げ)販売することは至難の業です。
私が入社する前のキーエンス(旧社名リード電機時代)は、さしたる競争の無いオリジナルセンサの販売で急成長したのは確実です。競争の無い商品にもかかわらず、先方から「値引け」と言われたからと、何の折衝もせず「はいわかりました」と営業担当者がホイホイと値引きに応じていたら、それこそ会社はたまったものではないです。
これはキーエンスに限らず、業種・企業規模にかかわらず、どこの経営者でも同じ考えをお持ちのはずです。営業担当者の根拠の無い値引きを回避するため、売上金額でなく利益額による予算管理を行う手法は、キーエンスの企業風土ともいえる論理的かつ経済原則に乗っ取っていると考えるべきであります。
しかしながら、私が入社した際に存在した3つの事業部のうち、残り2つの事業部の営業部門は大手企業を含む先行するライバル会社との販売競争がありました。もちろん私もし烈な販売競争を体感しました。
在職していた当時、後発で参入したある商品の販売を巡って、どう考えても小首をかしげる議論がありました。誰かが「値引きしてでもシェアを高めるべきだ」、対して「値引きはダメだ。利益が重要だ」と議論していることがありました。実のところ、この手の議論は不毛の議論だとおわかりですよね。利益で営業予算を管理している以上、予算目標を達成すれば利益率が良い・悪い(付随して出荷数量が多い・少ない)にかかわらず、「会社が確保する利益総額」が予算計画通りになるからです。
実際のところ、キーエンスの営業担当者は売上の金額には関心をもちません。キーエンスが上場した後、上場会社としての情報公開である売上高推定を期中に公表するわけですが、最終結果として売上高が未達成にもかかわらず、利益(営業利益、経常利益)は達成という事態があった記憶があります。もちろん営業部門は利益で管理しているので一切お咎めなしですし、このことは、全営業担当者が売上金額より利益(成果)を意識した結果であり、これも創業者が志向した経済原則のシステムに乗っ取った結果に違いないと言っていいでしょう。
いま現在から回想すれば、「利益による営業予算の管理」は、一般の会社には無いキーエンス独特の厳しいシステムだとは思いますが、正直言って私の退縮理由にはなりません。他の会社のシステムや事情など全く知らない新卒入社の私にとって、勤務していた当時は全然へっちゃらな内容でありました
※『元キーエンス社員の回想、通算100回』にして、学生さんむけ、社会人むけ、そして経営トップ・事業責任者むけの記事をまとめてみました(コチラをクリックしてください)。